大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)2790号 判決

被告人 小川博

〔抄 録〕

弁護人控訴趣意第一点に対する判断。

しかしながら原判示の恐喝及び暴行の各事実は、いずれも各対応する挙示証拠によつて認めることができ、記録を調べてみても、原判決に事実誤認のかどはいささかも存しない。すなわち、所論原判示第一の(一)及び(四)の事実摘示(これは判示第一の(二)についても同様であるが)に当つて原審が「いかなる」又は「どんな危害を加えられるか判らない気勢を示して」と摘示したのは、被告人が相手方に対してその生命身体又は自由に対して危害を加うべき気勢を示したことを判示した趣旨と解せられるので、いずれも恐喝罪の事実摘示として欠くるところなきものというべく、これが具体的の害悪の告知でない旨の所論は原判示の文意を誤解したのによるものである。つぎに、原判示第一の(二)について、所論被害者仁木の原審公廷の供述調書を検討するに、その関係部分中二回目に被告人に金を取られたときの状況として、「別に脅し文句は言われませんでしたが」との供述記載はあるが、同調書関係部分の記載の全趣旨からみて、決して同人において何等畏怖の念を生じなかつた趣旨の証言とはみられない。さらに原判示第一の(三)についても、被告人が相手方に対して暴行を加えて金員を喝取する意図に出でたことは証拠上明白であつて、所論はひつきよう原審の証拠の価値判断又は事実認定について独自の見解を主張するに過ぎないものというべくいずれも採用するに由なきものである。

(中野 尾後貫 堀真)

註 原判決の事実中

第一、の

(一) 不良仲間二名と共に昭和三十年三月中旬頃長岡市地下道西側入口附近で仁木堯(二十才)に対し「昨年病院を出て来たが金が要るから千円貸して呉れ」と申し向け、之を拒否するや「なめるな」と云いながら睨めつけ、右の要求を容れなければ居合せた仲間数名といかなる危害を加えられるか判らない気勢を示して右仁木を畏怖せしめ、因つて間もなく前同所に於て同人から借用名下に現金五百円の交付を受けて之を喝取し

(二) 不良仲間二名と共に同月十八日頃の午後七時頃、同市城内町一丁目小川屋又は吉幸商店玄関前空地において右仁木堯に対し「金が五百円位要るから貸して呉れ」と申向け、仁木が右要求を容れなければ居合せた仲間数名といかなる危害を加えられるか判らない気勢を示して同人を畏怖せしめ、因つて間もなく前同所で同人から借用名下に現金三百円の交付を受けて之を喝取し

(四) 不良仲間数名と共に同月下旬頃、長岡市公民館二階露台において前記仁木堯を呼止め同人に対し怒つた顏で「金を貸せと云うのに何故持つて来なかつた、必らず明日午後三時迄に銀座パチンコへ金五百円届けろ」と申向け、右要求を容れなければどんな危害を加えられるか判らない気勢を示して同人を畏怖せしめ因つて右翌日午後三時頃、同市東坂之上町鍋忠金物店前路上において右仁木から借用名下に現金四百円の交付を受けて喝取したものである。

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